kanjuuunのブログ

タイニーハウスで暮らすことについて

エコプロダクツ2014報告②

エコプロダクツ2014で行われた講演のうち、参加できた以下7つの講演についてご報告します。

  1. 次世代エコハウス開発を目指して、慶応共進化住宅の挑戦
  2. 福島浮体式洋上風力プロジェクトの最新動向
  3. 再生可能エネルギーの大量導入に向けた研究開発
  4. 環境と共生し地域を創成する地熱開発を考える
  5. 里山資本主義と日本の未来
  6. 田舎から変わる!日本を変える!
  7. 藻類バイオマスエネルギー実用化への最新研究〜筑波大学の取り組み

次世代エコハウス開発を目指して、慶応共進化住宅の挑戦

慶応大学SFC研究所の共進化住宅実証実験コンソーシアムの研究成果の共有でした。共進化住宅とは、都市・空間・人が一体となって共に進化できる住宅を目指したものらしく、電気は自家発電で賄い、温度操作などのインターフェイススマホに統一するなどICTを積極導入し快適性を高め、熱中症予防など健康管理もできるといった辺りが売りのようでした。

コエボハウス | 慶應型共進化住宅 - Keio Co-Evolving House

将来的には発展途上国にも展開したいという意欲も持たれているというお話でした。快適性が上がることが、住宅内の移動歩数を上げたり、健康促進効果があることは評価できるかと思います。工期は従来工法に比べても短期間で済むようですが初期投資が抑えられないと、海外はもちろん国内での普及も厳しいかな、という印象です。現在は実証段階のため、未来の住宅提案の1つというところでしょうか。

福島浮体式洋上風力プロジェクトの最新動向

震災後、福島いわきの洋上で実証実験中の洋上風力発電プロジェクトの成果報告でした。プロジェクトリーダである東大大学院教授の石原孟教授がプロジェクトにおいて、困難だが解決した技術課題などを熱く語っていました。が、ぼくは税金の無駄と思って聞いていました。石原教授は費用について全く触れていませんでしたがこのプロジェクトには、国費500億円が費やされています。

福島県沖の浮体式洋上風力 7000キロワット発電8月開始 風車土台が小名浜港到着 | 県内ニュース | 福島民報

地上風力の1.5倍の発電量でも、建築、維持コストは地上の2倍という試算です。

法制度・規制:洋上風力のコストは陸上の2倍以上、買取価格は30円台へ - スマートジャパン

原発輸出が厳しい今、代替クリーンエネルギーとして海外輸出する目論見が国策としてあるのかもしれません。ケネディ駐日大使が興味を持っており、国防省からコンタクトがあったことを石原教授は壇上で話されていましたが、既存の地上風力のみでなくAltaeros Energiesなど競合がいる風力発電市場で競争優位性を発揮できるのか疑問です。原発225基を計画中の中国には代替発電としてぜひ買って欲しいですが。。

再生可能エネルギーの大量導入に向けた研究開発

産業技術総合研究所産総研)が今年の4月に福島県郡山市に建設した福島再生可能エネルギー研究所の紹介がメインの発表でした。

再生可能エネルギーの開発・実証を行える施設で東北の再生可能エネルギーを扱う企業の支援なども行っています。数ある技術の中でエネルギーを化学的に安定したメチルシクロヘキサン(水素キャリア)として貯蔵する技術が面白く感じました。エネルギー蓄積についてはNAS電池などに蓄電する技術が兎角注目されがちですが、これらエネルギー高密度な安定物質に置き換え保持できれば、電力が欲しい時に取り出せる、送電網などインフラ投資が必要無い、などのメリットがありコストによってはスマートグリッドの対抗策となるかもしれません。

環境と共生し地域を創成する地熱開発を考える

前回一部紹介した東北大大学院の新妻弘明教授が、いくつかの地方と関わり取り組んでこられた研究結果の共有でした。エネルギーの地産地消の考えであるEIMY(Energy In My Yard)を取り入れた岩手県葛巻町の水車を利用した「森のそば屋」、福島県天栄村の地熱・木質エネルギー利用などの例が紹介されていました。講演後、EIMYについてもっと知りたいと思い、新妻教授の著書「地産地消のエネルギー」を読みました。新妻教授は、地域に良かれと熱効率的にも優れた最先端技術を用いた計画導入を提案したものの、地域の人々に受け入れられなかった経緯を踏まえ、専門家としてのスタンスを見つめ直したそうです。EIMY型社会の実現はあくまでも地域の特性(風土、歴史、伝統、文化、知恵の蓄積)を理解した地域の人々の手で行うものであり、専門家はそれを下支えする存在であるべきだとしています。ただし地域の人々がすべての特性について自覚的であるわけではなく、現代的な意義を見出したり、価値の再発見されるのを手助けできるよそ者としての専門家である、といった立場に立たれていることに共感を覚えました。

里山資本主義と日本の未来

里山資本主義提唱者の藻谷浩介氏(日本総研)と太田昇氏(岡山県真庭市長)による講演でした。

マネー資本主義に対する里山資本主義。里山資本主義とは保険なんだ、と言われていたのが印象的でした。それは化石燃料費変動に対する保険でもあるし、1つのバイオマスに頼るのではなく複数のエネルギー源を持っておく、という保険でもあります。CLTなど高度な技術も取り入れつつ、地域循環だけでなく外部にも積極的に地場品や循環システムを売り込む真庭市。高い二酸化炭素排出削減が求められる中、化石燃料依存ではないエネルギー源を手に入れた地方行政の影響力が今後大きくなる可能性を強く感じました。

田舎から変わる!日本を変える!

日本の田舎は宝の山」著者の曽根原久司氏(NPO法人えがおつなげて代表)、西口和雄氏(NPO法人英田上山棚田団理事)による対談。どうすれば田舎を変える活動が継続できるのかという話題の中で、曽根原氏も西口氏も共通して開墾をあげていました。開拓者精神にスイッチが入るというか、一理あるかもしれないですね。トークショー中に開墾モリモリ〜、というポーズをぼくを含めた聴衆は2回させられました笑。でもこういったポーズや形からというのも、Amy CuddyやDee Williamsが言うように大事ですね。実践します。

藻類バイオマスエネルギー実用化への最新研究〜筑波大学の取り組み

筑波大学の藻類オイル共同研究に対する田辺雄彦准教授による研究発表でした。

渡邉信研究室 藻類バイオエネルギー実用化のための研究開発

仙台市の南蒲生で生活排水を活用した藻類培養の開発・実験が行われており、ボトリオコッカスから藻類オイルを安定生産する技術はできているものの、化石燃料と比べるとやはり採算が合わず、市場提供はまだ難しいようです。そのため、付加価値商品路線をとり、藻類オイルが深海鮫から採れるスクワランと同程度の保湿性があることから、デンソーと共同で商品開発しmoina(モイーナ)というハンドクリームを近頃販売したそうです。量産体制を整えることでエネルギーオイルとしての供給価格も下がれば市場に出てくる可能性はあり、面白い分野ではあります。

 

振り返り

エネルギーのあり方について、化石燃料依存から脱却すべく産学、地方といった各方面が凌ぎを削っている状況は垣間見えました。ただ国としてどうしたいのか、というヴィジョンが不透明で、混沌としている印象も同時に受けました。COPにおいて、原発事故による温室効果ガス削減が停滞しているという言い訳が通用せず、日本が高い温室効果ガス削減目標を求められている中、国のレベルでは対象とするエネルギー研究開発の選択と集中の対応が遅れるほど、削減目標達成に要するコストもかさみ、ツケが大きくなる。かたや地方は、域外に流出するコストを削る努力をし僅かながらですが、将来への投資も始めている。日本の田舎が持つポテンシャルと実績を再確認できたことが、今回のエコプロダクツでの一番の収穫だったかなと思います。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。