kanjuuunのブログ

タイニーハウスで暮らすことについて

福島でいま何ができるか?その①

今回のタイトル、少し言葉足らずなので補います。

「持続可能な社会のために、福島でいま何ができるか?」

というテーマで考えてみたいと思います。

 

福島第一原発事故で、原発が未来に残す負債が計り知れないものであることがはっきりしました。震災から3年目で11兆円超、廃炉40年間のトータルは、、気を失いそうになるので止めておきます。

震災3年 原発事故の損害額11兆円超に | 東京電力 福島第一原発事故 関連ニュース | NHK 40年後の未来へ 福島第一原発の今

原発事故が起こる前、日本は内需縮小を受け、海外への原発輸出を加速しようとしていました。元日立製作所で原子炉設計者を務めた大前研一氏は、震災前2009年の著書「「知の衰退」からいかに脱出するか?」の中で以下のように述べています。

世界が原子炉に頼るということはすなわち日本がその主導を握ることを意味する。じつは現在、原発を完全な形で供給できる会社は世界に4社しかないからで、そのうち3社が日本の会社だからである。4社とは、日立、東芝三菱重工と、フランスのアレヴァだ。

(省略)

東芝だけで33基の受注残があり、これをこなすだけで大変なビジネスになる。なにしろ、原発1基を建設するには、土地買収や周辺への保証を除いても5,000億〜6,000億ほどかかるのだ。

原発輸出で稼ぐことの是非はあるとして、外貨を稼ぐ手段を削がれたという点において、原発事故は国益に反するものだったでしょう。

 

「持続可能性」

最近この言葉が意味するものについてすごく考えています。

福島が生んだ偉大な歴史学者でありイェール大学図書館キュレーターを40年間に渡り務めた朝河貫一博士は、日露戦争後の日本が大戦に突入していく機運に、アメリカの地から著書「日本の禍機」にて警告を発しました。それによると、

今や日本国民に求められていることは、これ(反省力)を個々の人々の性格としてだけではなく、国民的性格として極力増進することに務めることである。もしこの力を育て、他国に対して公平は態度をとり、自国に対して、たびたび客観視する習慣を身に付け、一時の国利と100年の国害とを比較することの大事な訳・理由を知り、かつ国家と人類全体との関係について高い見識を得るようになれば、日本はすでに正義を貫き正しい道に進もうとする国民的義心と勇気において、世界に抜きん出ているばかりでなく、併せて国家が長く安寧であるための術において、必ずや天下の模範になるであろう。

と記しています。日本の国益だけのためではなく、人類全体の利益をこの時代に捉えられていた人は珍しかったんじゃないか、と思います。今に目を向けると、

日本の国家としての持続可能性を最重要視した場合、国の借金を減らしていくために、他国への原発輸出で稼ぐという理屈は一見成立するように見えます。でも永続的な安寧が得られると言えるか?

一方地球に視点を広げた時、人類存続を脅かす温暖化という大きな問題があります。地球の持続可能性を最重要視した場合、温暖化を防ぐために、温暖化ガスを大量排出する化石燃料からクリーンエネルギーと呼ばれる原発にシフトする。これも理屈として成立しそうですが、果たして永続性があるか?一度事故ってしまえば、廃炉コスト、原発周辺での放射能汚染が続くという意味では永続性がありますが。。

上記を少し踏まえた上で、

「持続可能な社会を維持するために、福島でいま何ができるか?」について再度考えます。

まずは福島が抱える持続可能性を阻害する問題として、

  1. 農作物の放射能汚染
  2. 肥満率の高さ
  3. 産業について
  4. 原発廃炉リスク

を挙げます。放射性物質摂取による内部被曝リスクについては、既に多く語られていると思うので割愛します。過去事例(チェルノブイリ)から放射性物質による子供の甲状腺癌発症率は大人に比べ高いと言われているので、子供がいる家庭は十分に気をつける必要があると思います。ただ子供がいない家庭であれば、線量検査のされた福島県産の農作物を積極的に日常的に食べるべきではないか、と考えています。それは、地産地消、地元の農家を守るため、また配送コスト、エネルギー削減観点で望ましいと思うから、です。経済学者の宇沢弘文氏は、市場に委ねるべきではない社会的共通資本の一つとして農業存続を強く主張していました。 一方、池田信夫氏が彼のブログの中で、宇沢氏の農本主義について批判しています。

宇沢氏は東京で農協幹部や政治家の話しか聞いていないのだろうが、私は地方に勤務して何度も農協を取材したことがある。どこの村に行っても農協は農民を搾取する組織として怨嗟の的であり、農協の幹部はいかに役所をだまして多額の補助金を獲得するかのテクニックを得意げに語った。宇沢氏が美化する農協こそ、戦前の日本を滅ぼした国家資本主義の最後の砦なのだ。

池田信夫 blog : 宇沢弘文氏の奇怪な農本主義 

 農協が農業利権を貪る組織と化していることについては池田氏の意見に全面賛同しますが、宇沢氏が目指したものは、著書「ゆたかな国をつくる―官僚専権を超えて」で語られているように、今の村という既成の集団ではなく、農協ほど大きくもない、組織的農業小集団だったはずです。大は小を兼ねるとよく言いますが、こと組織に関しては歴史を振り返ってみても肥大化して良かった試しはありません。

地産地商なトランジションの活動(前述参照:リエコノミーという可能性)が、いくつかの自治体で始まっていますがこれは組織としてちょうどいい大きさじゃないか、と思います。何を以ってちょうど良いと言えるかは少し定義が曖昧ですが、利権を囲うことに組織が固執しないでいられるサイズでしょうか。組織が肥大化すると、それだけ存続自体に固定費がかかり、利権に縋り、離れられない関係性が築かれてしまいます。

肥大化の流れで、次の問題点、肥満についてです。福島県の子供の肥満率は昨今、全国トップレベルです。理由としては、放射線を心配して外で運動をさせない、原発によるストレス、があると言われています。 

 では大人の肥満率はどうか?2005年〜2009年と少し古いデータですが、全国4位の肥満率でした。これは震災前の調査結果なので、子供の理由とは異なります。原因はなんでしょうか?

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参照元都道府県別の肥満及び主な生活習慣の状況

摂取と消費の双方で複数のファクターがありそうですが、私は一番の原因は食生活ではないかと、考えています。福島県は米の収穫量で全国7位です。炭水化物と肥満の関係は近年クローズアップされてきています。

新潟は全国1位の米どころですが、肥満率は全国27位と低くなっています。これは塩分摂取量の違いがあるかもしれません。肥満と塩分摂取の相関について、統計的優位性が確かだと現段階では言えないので推測の域を出ませんが、私は専門家ではないので詳細は以下に譲ります。

塩分が寿命短縮を加速させる青少年の肥満体:ジョージア・リージェント大学/乃木生薬研究所

なぜ肥満率の高さを問題視するかと言えば、肥満は生活習慣病の重要なファクターだからです。生活習慣病の治療は当然国の医療費で賄われることになります。肥満改善ができれば、医療費削減に効果が期待できます。


一概に肥満と言っても、気をつけなければならないのは内臓肥満の方です。BMIで平均より上の25〜30の方が長生きするという統計データもあります。何事もやり過ぎは良くないです。

子供達に対しては、食育や心のケア、大人に対しては食生活改善が地域活動でできることが望ましいと考えます。医食同源。食事を何よりの楽しみにされている方も多いと思うので、食生活改善は急がず徐々に変えていく、が基本になるかと思います。 

 

次に産業について。震災後比較的放射線影響の少なかった福島第一原発の南に30km以上離れた位置にあるいわき市に、復興協力を兼ね県外から工場を建てようとする企業があったり、県中で最大人口を抱える郡山市医療・福祉ロボスーツ生産拠点(サイバーダイン社の工場が新設されるなど、福島の雇用を支えてくれようとする企業もあります。また、会津大学がスーパーグローバル大学に指定され国の補助が拡充されたり、インキュベーションセンターをいわき市に設置するなどの動きもあります。

現在福島に圧倒的に不足していると感じるのは、持続可能なトランジションの仕組みや構想です。トランジション団体としてトランジションうつくしまトランジション裏磐梯がWEB上に存在していますが、残念ながら中身(活動報告)がなく、機能していないようです。活動できていない明確な理由はわかりませんが、ボランティアや軽い気持ちの変革意識ではこれらの活動は持続しないと考えています。どうしても、自分たちの生活や仕事が第一優先になるのは仕方がないことです。ならば、仕事として責任を持って持続可能な社会作りに関われる環境を整えたい、とぼくは考えています。雇用創生と人材育成が大きなテーマです。これについては、次回その②で詳しく触れたいと思います。

 最後に、原発廃炉リスクです。福島で生活を営む以上、最低でも40年は福島第一原発と向き合っていかなければなりません。非常に長い付き合いです。どう向き合っていけば良いでしょうか。

リスクについて、正しく怖がる必要があると考えています。原発の怖さは、言わずと知れた、目に見えない恐怖です。それは心的ストレスを生み、疾病リスクにも成り得ます。見えないからこそ、放射線に関する情報はできる限り見えている必要がある。また、日本が初めて経験するメルトダウンした原発廃炉作業ですから、最悪のケース(11/5に福島第一4号機は廃炉に道筋 使用済み燃料取り出し完了しているので、最悪のリスクレベルは下がったのかもしれませんが)を想定して、いざとなったらいつでも逃げられる準備も欠かせないと思います。家財道具や生活を捨てることなく逃げるためにタイニーハウスは有効だと考えているため、福島で普及させたいと思うのです。

身も心も家も組織もシェイプアップしませんか?

ぼくが提案したいのは、一言で単純に言ってしまえばこういうことです。

 

次回は、持続可能な地域を支える具体例を絡めて、

「福島でいま何ができるか?その②」をお送りします。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。